通訳の仕事の大変なこと10個:想像と違います

仕事

はじめに:通訳の大変なこととその背景

「通訳」と聞くと、一体どのようなイメージが頭に浮かびますか? 言葉の達人、国際的な環境で働くプロフェッショナル、或いは流暢な英語を話す人物…。通訳者の職業には憧れを抱く人も多いでしょう。

しかしながら、見えてくるのは一面の光景だけです。一般に知られていない、あるいはあまり語られない「通訳の大変なこと」について、私たちはどれほど理解しているでしょうか?

通訳者の仕事は確かに魅力的ですが、それは一方で、多くの困難や挑戦を伴う職業でもあります。技術の進化や業界の環境変化、そして孤独感や人間関係の難しさなど、通訳者が直面する「大変なこと」は数多く存在します。

この記事では、そんな通訳者が直面する「大変なこと」について詳しく解説します。現場のリアルな声をもとに、通訳の厳しさとそれに立ち向かう通訳者の姿を描き出していきます。

ここで紹介する事例や視点を通じて、通訳という職業をより深く理解するきっかけになれば幸いです。また、これから通訳の道を目指す方々が、その道のりのリアルを把握し、それでもなお通訳の道を選ぶ決断を助ける一助となれれば、これ以上の喜びはありません。

さあ、一緒に「通訳の大変なこと」について、その深淵へと踏み込んでいきましょう。

通訳の仕事の大変なこと10個

脳のエネルギーを全て使い果たすくらい大変

通訳という職業は、一見華やかに見えても、その実は相当な労力と集中力を要するものです。特に同時通訳は、その中でも格別な困難さを持つと言えるでしょう。なぜなら、彼らの脳は極限まで酷使されているからです。

考えてみてください、言葉を瞬時に別の言葉に変換し、それを即座に伝えるというタスク。この作業が同時通訳です。そこには、言葉を聞き、同時にそれを翻訳し、さらに聞き手に伝えるという、一見しただけでは気づかない複雑なプロセスが含まれています。アメリカ大統領の生演説の同時通訳を見たことがあるでしょうか? その背後で、通訳者は自分の脳の疲労と戦いながら、スムーズに作業を進めているのです。

その疲労感は、一般的な疲れとは異なります。常に脳をフル回転させ、全力で思考を巡らせなければならない同時通訳は、マラソンを走り続けるような疲労感を引き起こします。これこそが同時通訳者が絶えず直面する、大変なことの一つです。

そして同時通訳者たちは、その厳しい現実に立ち向かいながら、高度な集中力を維持しなければならないのです。大規模な講演会や会議などでは、彼らは数時間にわたり絶え間なくその作業を行います。例えば、テレビでアメリカ大統領の演説を通訳する際には、2〜3人の通訳者が交代しながら作業を進めます。これは、彼らが直面する大変なことの一部を物語っています。

通訳という仕事は、一見華やかでありながらも、その実態は大変なことに満ち溢れています。しかし、それは彼らが言葉を通じて世界をつなぐという役割を果たしている証でもあります。同時通訳という仕事は、その大変さに見合うだけのやりがいも持っているのでしょう。

通訳のビジネス交渉での責任の重さ

通訳の仕事は、脳を酷使するだけでなく、時には企業や組織の命運を左右するほどの責任が伴います。そう、何気なく耳にする「通訳」の仕事とは、実は大変なことが多いのです。今回は、そんな通訳者がビジネスの現場で直面する、その責任の重さについて考えてみましょう。

ビジネスの世界で通訳が呼ばれる状況といえば、会議や接待が思い浮かびますが、それだけが通訳の仕事ではありません。むしろ、その大部分はもっと大きな舞台で、もっと高いプレッシャー下で行われます。交渉や契約といった極めて重要な場面で通訳の存在は、企業の命運を左右することも珍しくありません。

ここで、一つ想像してみてください。国際的なビジネス交渉の場に通訳として参加したとします。会議室は緊張感に満ち、全ての参加者からは互いの言葉を理解するための視線があなたに注がれています。この場面で通訳者に求められるのは、ただ単に言葉を伝えるだけではありません。通訳者は全ての情報を正確に把握し、文化やニュアンスの違いも織り交ぜて、可能な限り正確に言葉を伝えることが求められます。

そのような状況下で、一字一句、違いが会社の運命を左右する可能性があるため、通訳者が犯すミスは許されません。その責任の重さと緊張感は、どんな状況下でも冷静さを保つ能力を求める、大変なことの一つでしょう。ここで一瞬でもミスをすれば、それは企業にとって大きな不利益をもたらす結果に繋がります。これは間違いなく通訳者が直面する大変なことの一つでしょう。

通訳者は言葉を通じて世界をつなぐ重要な役割を果たしますが、その裏には驚くほどの責任とプレッシャーが存在しています。それこそが通訳者の仕事の難しさであり、またその価値なのかもしれません。

高額な通訳報酬に対する、クライアントからの過度な期待

完璧主義のプレッシャーという、通訳者が直面する大変なことを考えてみましょう。ある種、それは高い料金を払っているからこそ求められるものであり、それが通訳者に対してかなりのプレッシャーを与えています。

通訳者にかかる費用は、専門性や経験によって様々です。日常会話レベルの逐次通訳でさえ1日2万円以上となることがあります。そして、もし金融・IT・医療といった専門分野の通訳であれば、その価格は1日10万円以上に跳ね上がることもあるのです。その金額に対して、依頼者からの期待感は計り知れません。

想像してみてください。あなたがその大金を払って、通訳者を雇う立場だったら、その対価として完璧な結果を期待しますよね。だからこそ、通訳者には完璧主義のプレッシャーがかかるのです。

しかし、通訳者がどんなに優れた能力を持っていても、専門分野外の内容になると、完璧な通訳を行うことは容易ではありません。例えば、医療専門の通訳者が、突如としてIT関連の会議で通訳を求められたらどうでしょう。その通訳者がまったくITの知識を持っていなければ、それは極めて困難なタスクとなるでしょう。しかし、その困難さに関わらず、依頼者からは完璧な結果が期待されるのです。

こうした状況下で通訳者はプレッシャーにさらされ、万が一通訳が不十分だと感じられれば、苦言を呈されることもあります。このような状況こそ、通訳者が直面する大変なことの一つです。大金を払われる以上、その対価として通訳者の完璧なパフォーマンスが期待されますが、常に完璧を求められるそのプレッシャーは、想像以上に大変なものでしょう。

調査も含めた仕事量がやばい

通訳と聞いて、人々がまず思い浮かべるのは、同時に話される言葉を他の言語に瞬時に変換する瞬間的な能力かもしれません。しかし、ある意味でそれは氷山の一角に過ぎません。通訳の仕事の大変なこととして、大量の学習と厳しい事前準備が必要であるという側面が存在するのです。

通訳の仕事とは、まさに事前準備が大半を占めるとも言われます。その準備は単に英語力を磨くだけではなく、会議の場合にはアジェンダの確認、事前に渡された資料の読み込み、依頼主の情報や相手先の情報の確認といった内容を含みます。つまり、通訳者は単なる言語の変換者ではなく、その場の情報を完全に理解し、それを伝える役割を果たす必要があるのです。

それに加えて、自分が不慣れな専門分野の場合、知らない単語は全て調べておく必要があります。例えば、エンジニアリングの会議で通訳を行う場合、通訳者は特定の工学用語や専門的な知識を事前に調査し、理解しておく必要があります。

通訳者にとって大変なこととは、言葉を変換するだけではなく、広範で深い知識を持つこと、そしてそのためには大量の準備が必要であるという事実です。その準備作業の多さと厳しさこそが、通訳の仕事の背後に隠された大変な一面なのです。

仕事までの準備のタイムリミット

通訳の仕事において大変なことと言えば、時間との戦いが挙げられます。そして、それは侮れない存在です。資料を読み込み、知識を得るための猶予期間があれば、それに勝つための準備時間があります。しかし、その猶予期間が限られている場合、通訳者は厳しい状況に直面します。

依頼主からの資料の共有が遅れたり、通訳の仕事までの日数が僅かであったりと、時には通訳者が求めるほどの時間を得ることができない状況が生まれます。それはまるで、川の流れを逆行するかのような困難さを伴います。

また、資料の量が膨大であったり、自分の不慣れなジャンルの通訳であったりと、時間が限られる中で困難さが増していく場合もあります。それは、巨大な山を登るような感覚にも似ているかもしれません。

そして、もし通訳者が他の大量の依頼を同時に抱えている場合、その難度はさらに上昇します。それはまるで、雨天の中での細い綱渡りにも似ています。

このように、時間との闘いは通訳の仕事における大変なことの一つで、それはストレスがかかることであり、通訳者の能力を試す一つの要素とも言えるでしょう。

安定しないフリーランス通訳の生活の恐怖

フリーランスの通訳者たちは、ある特定の恐怖と向き合っています。それは、いつ仕事が来なくなるかという不確実性、不安定さです。社内の通訳者であれば安定した仕事がありますが、フリーランスの通訳者は常に新たな仕事を探し続ける必要があります。それはまるで、波が荒く揺れる海を漕ぎ続けるような感じでしょう。

さらに大変なことは、一度組んだ良好なクライアント関係でさえも、一つのミスで雲散霧消する可能性があるということです。たとえば、大切なビジネス交渉での一つの翻訳ミスが、将来的な契約更新を阻む壁になることがあります。そのようなミスが将来の仕事の依頼を遮る可能性があるのです。

このような状況では、通訳者自身が自分に対してプレッシャーを感じ、自分のパフォーマンスに厳しい目を向ける必要があります。それはまるで、吹雪の中で永遠と感じる道を進むような状況かもしれません。

これらの恐怖と対峙しながら、通訳者は常に自分のパフォーマンスを高め、次の仕事を確保しようとします。これは、通訳者の仕事が求められる一方で、それが不安定であるという大変なことを示しています。そして、それは通訳者の日々のストレスを増加させ、未来に対する不確実性を増大させる要因となるでしょう。

AIによって通訳市場の縮小可能性

新たな波が通訳の世界に訪れようとしています。それはAI、つまり人工知能の出現です。近年のAIの発達は驚異的で、その波は通訳者たちにも影響を及ぼし始めています。この進化は、通訳者たちの未来に一抹の影を投げかけるもので、それはまた、通訳という仕事の大変な一面を形作っています。

例えば、OpenAIによって開発されたChatGPTは、すでに人間を凌ぐ翻訳能力を持つとされています。一部の専門家たちは、その表現力、理解力、そして翻訳スピードは、初級や中級の通訳者を凌駕すると指摘しています。人間が何時間もかけて行う作業が、AIにとってはほんの数秒で終わるのです。この技術的な進歩は、通訳者たちが直面する大変なことの一つでしょう。

しかし、この新たな脅威は全ての通訳者が絶望するわけではありません。なぜなら、通訳者の仕事は単なる言葉の置き換えだけでなく、文化や感情、ニュアンスの伝達、そして人間と人間とのコミュニケーションという要素を含んでいるからです。これらの要素は現在のAI技術ではまだ十分に補完することができないのです。

しかし、その一方で、技術の進歩は絶えず、AIの発達により、一部の簡単な通訳が不要となる日が来る可能性はあります。これは通訳者たちが直面する新たな大変な課題で、進化するテクノロジーにどのように対応するか、という選択を通訳者たちに問いかけるでしょう。

AIによる英語習得時代:通訳の需要が消える日

皆さんは「ChatGPT」という名前を聞いたことがありますか?これはAIの一種で、近年の英語教育界で注目を浴びています。このAIが提供する独自の学習法により、素人でも英語を短期間で上達できる時代がすでに到来しているのです。これは通訳者にとって大変なことで、将来的にはレベルの低い通訳業務がなくなる可能性を示唆しています。

ChatGPTはまさにデジタルの英語先生です。指示さえあれば、「この単語を使うといい」「もっとこのような表現を使うと自然だよ」「ここに文法ミスがあるよ」など、教師のような指導を行ってくれます。そして、彼らはどんな人間の英語教師よりも豊富な知識を持っていて、完璧な英語と日本語を話します。

この技術が進化し、更に効率的な学習法を提供するようになれば、AIと会話をするだけで英語の文法や単語の知識が身につき、間違いを修正し、私たちの英会話力を上げてくれる時代が来るかもしれません。英語学習者がAIと一緒に過ごす時間が増えるほど、自然と英語力が上達し、それが通訳者にとって大変なこととなるのです。

AIとの会話を通じて英語力を向上させることが可能となれば、多くの人々が一定の英語力を身につけることができるでしょう。その結果、日常的な簡易な通訳業務の需要が減少し、通訳者の市場が縮小する可能性があります。それこそが、通訳者たちが直面する、また一つの大変な課題となるでしょう。

孤独な戦士:通訳業界の孤独

通訳者というのは、実はとても孤独な存在なのです。私たちは依頼主と相手側、双方の間を取り持つという、重要な役割を果たしていますが、その裏には、自分自身と戦うという孤独な戦いがあります。これが通訳者の大変なことの一つでしょう。

特にフリーランスの通訳者の場合、仕事は事前準備から現場での通訳業務まで、ほぼ全て一人でやらなければならないのです。細かな情報のリサーチ、テキストの理解、それらを使っての通訳準備、そして実際の通訳。これら全てを一人でこなすのですから、自然と孤独感が生じます。

しかも、通訳という仕事は、依頼主も相手側の企業も、どちらも自分の味方とは言えません。依頼主は確かにあなたを雇ったお客様ですが、それは彼らがあなたに通訳を求めているだけで、自分が依頼主のために働くという意識が必要です。一方、相手側の企業は、依頼主の取引先であり、お客様のお客様。言葉を通じて依頼主とのコミュニケーションを円滑に進める役割を果たしますが、それはあくまで中立的な立場であり、そこにも孤独感が生じます。

そして、そのような孤独感が一つのストレスとなり、それがまた通訳者の仕事を更に大変なものとするのです。この孤独感との戦いが、通訳者の日常であり、これが通訳の大変なことの一つです。ですが、それでも私たちは言葉をつなぐという重要な役割を果たしています。その孤独の中にも、通訳者としての誇りと使命感を感じることができます。

人間関係が大変な通訳の仕事

通訳者の仕事といえば、第一に思い浮かぶのは「言葉の翻訳」でしょう。しかし、それだけが通訳者の仕事ではありません。実は、私たち通訳者は、さまざまな人間関係の網の目の中心で働いているのです。それがまた、通訳者の大変なことの一つです。

依頼主との関係、依頼主の取引先との関係。これらの人間関係は、通訳者にとって極めて重要です。彼らとのコミュニケーションは、ただ言葉を翻訳する以上の要素を含んでいます。依頼主からの指示の理解、それを正確に伝えるための適切な表現の選択、また、時には依頼主の意図を読み取る必要もあります。

それだけでなく、依頼主やその取引先との間には、時に高圧的な人間関係が存在することもあります。そのような状況下でも、通訳者は冷静に、かつ真摯に対応しなければなりません。そのためのスキルや経験も必要ですし、それがまた通訳者の大変なことの一つとなるのです。

例えば、依頼主から「あれを言ってくれ」と指示されたとき。その「あれ」が何を指すのか、それを適切に理解し、伝えるための言葉を見つけるのは容易なことではありません。また、依頼主の取引先が通訳者に高圧的な態度を取ったとき、それに冷静に対応し、仕事を続けるのは、かなりの精神力を必要とします。

通訳者は、文字通り人間ドラマの中心で働いています。そこには、様々な難解な人間関係が絡み合っています。それらを円滑に進めるためには、通訳者自身の人間力も問われるのです。この複雑な人間関係が、通訳者の仕事を一層大変なものとしています。それでも、我々通訳者は、その大変なことを乗り越え、人々のコミュニケーションを助けるという使命を果たしています。

おわりに:通訳の大変さを理解し、それでも輝く仕事へ

皆さま、この長い記事を最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。「通訳の大変なこと」について、私の考えや見解をお伝えすることができたこと、心から感謝申し上げます。

これまで取り上げてきた「通訳の大変なこと」は、一見ネガティブに映るかもしれません。しかし、ここで明らかになった各種の困難や挑戦は、同時に通訳者がその職業を選び続ける理由でもあります。

なぜなら、これらの「大変なこと」は、通訳者が毎日直面する現実であり、それを乗り越えることで初めて得られる達成感や充実感、それこそが通訳という仕事の醍醐味だからです。

また、皆様がこれから通訳の道を目指す際に、この記事があなたの参考になることを心から願っています。通訳者としての道は確かに困難を伴いますが、その一方で、新たな言葉の発見、異文化理解、そして人々の心を繋ぐという、他の仕事では得られない喜びや達成感があるのも事実です。

だからこそ、「通訳の大変なこと」を理解し、それでもなお通訳の道を選ぶ。その選択は、あなたが自分自身と向き合い、真剣に仕事と人生に取り組むための一歩となるでしょう。

そして、あなたがもし通訳の道を選ぶなら、その道のりはきっと価値あるものとなることでしょう。通訳という仕事は、言葉を介して人々を繋ぐという、ある種の魔法にも似た役割を果たします。その魔法を操るためには、「大変なこと」に立ち向かう覚悟が必要となるのです。

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