この記事では「通関士に必要な英語力」について解説します。
通関士は、国際取引を円滑に進めるために、税関の手続きやルールに詳しい専門家です。さて、そんな通関士には、英語力がとっても重要なのです。
なぜ英語力が大切かというと、世界中の取引で英語が共通の言葉として使われているからです。通関士が英語が得意だと、様々な国の人たちとスムーズにコミュニケーションができます。英語で話せたり、書類を読んだり書いたりできると、国際取引がもっとスピーディーに進むでしょう。
通関士の英語力は、ビジネス英語や専門用語を理解できるレベルが求められます。これができると、税関の手続きがスムーズに行われ、企業や個人が安心して輸出入の取引ができるようになります。
これからお話する通関士のお仕事について、英語力がどのように役立つのか、具体的な例も交えてご紹介しますね。英語力があれば、通関士としてのスキルがさらに高まり、より多くの人たちに貢献できることでしょう。
通関士とは?
そもそも通関士とは、簡単に言うと、国際取引をスムーズに進めるために、税関(税関は国境にある、出入りする荷物や商品をチェックする場所のこと。空港にも税関がありますね。)の手続きやルールを専門的にサポートするお仕事です。
輸出入する商品が税関を通過する際に、必要な手続きを行ったり、適切な税金が支払われるように手配したりします。通関士のおかげで、私たちが海外から取り寄せた商品が、安全かつ迅速に手元に届くのです。
例えば、ある会社がアメリカから大量のコンピュータを輸入したいとします。その場合、通関士は、アメリカからのコンピュータにかかる関税や消費税を計算し、正しい金額が税関に支払われるように手配します。
また、商品が適切な分類に入っているかを確認し、国際的なルールに従って適切に申告します。このようにして、通関士は、輸出入の際に発生するさまざまな問題を解決し、会社が安心して国際取引ができるようにサポートしています。
通関士のお仕事は、国際取引が増えるにつれてますます重要になっています。税関のルールや手続きが変わることもありますし、新しい法律ができたりすることもあります。だからこそ、通関士は常に最新の情報をキャッチし、自分の知識をアップデートしていく必要があります。
通関士に英語力はあまり必要ない
結論から言うと、通関士にそれほど高い英語力は必要ありません。
その理由は次の2つです。それぞれ説明します。
- 通関士試験において英語力が問われることがない
- 業務で英会話を話すことはない
- 業務でも使う英語はテンプレやルーティン
通関士試験において英語力が問われることがないから
試験は主に次のような内容で構成されています。
短答式試験:関税法、関税令、関税率表、関税分類の基本原則、国際物品分類など、通関士に必要な基本的な知識が問われます。また、関税法に関する法令や通関業務に関する法令の内容も試験範囲に含まれます。
計算問題:関税や消費税などの税額計算や、通関手続きに関する計算が出題されます。正確で迅速な計算能力が求められます。
論述式試験:通関業務に関する法令の適用や解釈、通関手続きや関税分類に関する問題が出題されます。具体的な事例に基づいて、適切な通関手続きや関税分類を答えることが求められます。
確かに試験の中で英語は出てくるのですが、英単語を知っていれば問題に答えられるので、英文を読み解いたりする必要はないのです。
例えば通関士試験の問題集を見ると「INVOICE」というページが出てくると思います。これは貨物の送り状(明細書)のことで、輸出貨物の記号、商品名、数量、契約条件、単価、仕向人、仕向地、代金支払い方法などが記載されています。
全て英語で書かれているのですが、英文はほぼ書いておらず、品目名が「Camera」「Laptop」になっていたり、依頼主の住所が「New york」になっていたり、重さが「2,000kgs」と表記されていたりするだけです。
つまり英語で書かれているレシートを読むような問題です。
実際海外旅行など行ったことがある方ならわかると思いますが、別に難しいことは書いてないですよね?しかも自分がどこで何を買ったか理解できますよね?
それが理解できるくらいの英語力があれば全く問題ないです。もちろん通関の専門用語はいくつかありますが、それも少し勉強すればすぐ理解できるようになるでしょう。
業務で英会話を話すことはない
通関士試験がこのように、簡単な英語力があれば解ける問題になっているわけですから、実務でもそこまで高度な英語力が求められることはありません。
基本的には英語の書類を処理するのがメインに仕事になりますので、英会話を使う機会も、高い英語力が必要な場面も少ないでしょう。
通関士試験に合格後の就職先としては「運送会社」「倉庫会社」「貿易会社」「メーカー」「商社」があげられますが、
中には海外の拠点や、クライアントと連携する必要があり、英会話を使って業務の進捗状況を報告したり、問題解決のためのサポートを受けたり提供したりすることもあるでしょう。
しかしこれは通関士としての業務というよりも、商社マン的な仕事になりますので、やはり通関士として英会話をバリバリ使うというのはあまりないかと思います。
また、通関士が所属する企業や組織によっては、英語でのコミュニケーションを行う担当者が別に存在することがあります。このような場合、通関士自身が高い英語力を持っている必要がありません。
業務で使う英語はテンプレorルーティンワーク
また、通関士のメインの仕事は英語の書類を処理することになるわけですが、そこには独創性や柔軟性が問われるような高度な英語は求められていません。
なぜならいちいち味のある文章などを書いていたら、通関業務がスムーズに行かなくなりますからね。
より効率的かつ正確に仕事ができるように、通関業務はある程度テンプレ化されており、ルーティンワークのようになっています。
これにより私たちが海外から取り寄せた商品が、安全かつ迅速に手元に届くようになっているのです。
英語力ゼロで通関士試験を合格した例
本当に英語力がなくても大丈夫なの?と思うかもしれませんが、実際英語力がゼロでも通関士試験に合格できたという方もいらっしゃいます。
例えばこちらのサイト「https://www.miko-sakura5523.com/tsukan/2020-02/」では「英語力0でも合格できました」というタイトルで、通関士試験を合格した事例について紹介されています。
「3単元のSすら覚えてない」と書かれていて、それは冗談だとは思いますが、英語が得意でなくても合格できたと次のように語っています。
「私は英語が得意ではなく英語が出来る方より申告書・タリフを読むスピードが遅いと思うのですが、過去問や実務・申告書問題集を解いていくうちに見た事がある貨物の名前や英単語は自然と分かるようになり、貨物分類の知識で少しずつスピードが上がってきました。」
別のこちらのブログ「https://tsukansi-rcs.com/fundamentals-needs-of-english-skill/」の通関士試験に合格された方も英語力に関して次のように語っています。
「結論から言うと、中学レベルの英語力で十分です。英語アレルギーのある方でも全く問題のないレベルだと思います。どちらかと言うと、覚えておくべきなのは、貿易実務で使われる英単語や専門用語です。これらに関しては、誰もが一から覚えなければならないものがほとんどですが、ボリューム的には、非常に少ないと言えます。ですから、まったく「英語力」に関しては心配する必要はないと思います。」
TOEICスコアを求める求人はあまりない
通関士になる上で英語力が必要ない最後の理由は、求人で必要なTOEICスコアなどの記載がない点です。
よく英語を使う仕事では、応募条件としてTOEIC800点などと書かれていたりしますが、通関士の求人ではそれが書かれていることは稀です。
この点から見ても通関士に求められる英語力は一般的には高くないでしょう。
TOEIC600点、英検準2球程度の英語力があると良い
通関士にはそこまで高い英語力は必要なく、英語力があると仕事がスムーズに進むことがあル程度だとお分かりいただけたと思いますが、
では具体的にどれほどの英語力があればいいか気になりますよね?
おおよそTOEIC600点、英検準2級通関士として十分活躍できるでしょう。
これらの英語力が基準になるのは2つの理由があります。以下それぞれ説明します。
- 就職に有利
- 仕事で使う可能性がある
就活や転職で有利
通関士になる上で、試験では英語力は求められないのでTOEICスコアや英検などは関係ないのですが、
就活するときにTOEIC600点、英検準2級を持っていると有利になる可能性はあるでしょう。
前述通り、通関士として働くには「運送会社」「倉庫会社」「貿易会社」「メーカー」「商社」または通関業務を専門に行う企業に就職することになるのですが、
その時に英語力があれば、他の人材よりも能力が高いことを証明できるので有利になる可能性があります。
またメーカーや商社などでは、通関業務以外でも英語を使う機会がとても多いので、英語力を持っている人材は重宝されるでしょう。
その時にTOEIC600点、英検準2級程度の英語力があれば、「多少英語はできるな」と思われますので、その意味で就活や転職で有利となるでしょう。
またTOEIC800点、900点以上を持っていれば、より就活や転職で有利になりますし、より良いポジションを獲得できる可能性があります。
仕事で使う可能性がある
通常の通関業務ではあまり英語を使うことはありませんが、以下のように英語力があると便利なシチュエーションもあるでしょう。その時TOEIC600点、英検準2球程度あるとスムーズに仕事が運びます。
- 海外の取引先とお話する時:通関士さんが外国の会社と仕事をする時、英語が共通の言葉として使われることがあります。例えば、アメリカのお客さんが日本の商品を輸入したいとき、通関士さんが英語で「この商品は関税がいくらですか?」と聞いたり、手続きに必要な書類を英語で送ったりすることがあるんです。
- 英語の法律や規則を読む時:通関士さんは、国際的なルールや法律を知っていないといけません。そのため、英語で書かれた文書や法律を読むことがあります。例えば、世界中の国が共通で使っている関税に関するルールがあるんですが、それを英語で理解できると通関士さんのお仕事が楽になります。
- 海外の同業者と情報交換する時:通関士さんは、海外の同業者ともお話をすることがあります。英語が話せると、たとえばイギリスの通関士さんと「あなたの国ではどんな方法で関税を計算していますか?」といった具体的なお話ができるんです。
英語力があると、こういった場面で役立ちますし、通関士さんの仕事の幅が広がります。
英語力よりも通関士試験に合格するほうが重要
通関士になる上で大切なことは、英語力を鍛えることよりも通関士試験に合格することです。その理由は、通関士試験が通関士としての基本的な知識や技能を測るものであり、試験に合格しなければ通関士として働く資格を得られないからです。
通関士試験は、関税法、関税令、関税分類、通関手続きなど、通関士に必要な専門知識を評価する試験です。試験に合格することで、通関業務に関する法令や手続きを正確に理解し、適切な対応ができることが証明されます。これが、通関士としての信頼性や専門性を保証するための基本条件となります。
一方で、英語力は通関士の業務において役立つスキルの一つですが、必ずしもすべての通関士が高い英語力を必要とするわけではありません。業務内容や取引先によって、英語力が重要な要素となる場合もありますが、国内向けの業務や英語を必要としない取引先とのやりとりが主な場合もあります。
したがって、通関士になる上で最も大切なことは、通関士試験に合格し、通関士としての基本的な知識や技能を身につけることです。英語力はあくまで補助的なスキルであり、通関士試験に合格することが通関士として働くための最優先事項となります。
何よりも就活の方が重要
通関士になる上で重要なことは英語よりも試験に合格すること。さらにそれより重要なのが就職活動でしょう。
なぜなら通関士になることよりも、どこの会社で働くかの方が影響度が強いからです。
大きな会社に入れれば、より安定した人生を歩めるかもしれませんし、福利厚生がしっかりしているかもしれません。
またいい会社に入れれば、年収も高い可能性があります。
これらは通関士試験に合格すれば自動的に得られる権利ではなく、就職活動や転職活動をしっかりやることで得られるのです。
ですから人生という大きな視点で見れば、それらの方が重要度が高いでしょう。
そうした意味では英語力というのは、あった方がいいかもしれません。
なぜならすでに述べましたが、英語力があるといい会社に入れる可能性が上がるから。
近年ではグローバル化が進み、どの企業も海外進出を進めているので、英語ができる人材を求めています。英語力があればより良い企業に入れる可能性があり、より良い人生を歩める可能性があるのです。
ですから就職をうまく行かせるためにも、英語力はあった方がいいかもしれません。
まとめ:英語ができる通関士になろう
この記事では通関士に必要な英語力について解説させていただきました。
意外かもしれませんが、通関士にはそこまで英語力が求められないことがお分かりいただけたかと思います。
「じゃあ、英語の勉強しなくてもいいか」となる人もいるかもしれませんが、
私個人としては、英語は絶対に勉強した方がいいと思います。
その理由は、人生は長く、英語が話せるとその人生をより充実したものにできるからです。
通関士ももちろんやりがいのある仕事で、それが夢であればぜひ達成してほしいです。
しかしながら人生は長く、生きている間に他にやりたいことも出てくるでしょう。海外で仕事をしたいと思うこともあるでしょう。
そんな時に英語力があれば、語学力が原因で夢が塞がれることはありません。
常に広い可能性を持って生きれるわけです。
ですからみなさんにはぜひ今続けている英語学習を引き続きおこなっていただき、英語ができる通関士を目指してほしいと思います。
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